東京高等裁判所 昭和34年(う)2679号 判決
被告人 井口亮雄
〔抄 録〕
なお職権をもつて調査するに、原判決はその判示事実に法律を適用するに当り、被告人の立候補前の判示金員供与の所為は公職選挙法第二百二十一条第一項第一号第三項に該当するものとしているのであるが、同条第三項にいう「公職の候補者」とは、同法の規定にもとずく、正式の立候補届出又は推薦届出により候補者としての地位を有するに至つた者をいい未だ正式の届出をしないいわゆる「公職の候補者となろうとする者」を包含しないことは最高裁判所判例(昭和三四年(あ)第一一九〇号昭和三五年二月二三日第一小法廷判決参照)の示すところであるから、原判決が立候補届出前の被告人の所為に同条第三項を適用したのは法令の適用を誤つたものというべく、同条第三項の罪が同条第一項の罪に比し、その法定刑において重いことにかんがみれば、叙上の誤が判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。
(岩田 渡辺辰 司波)